No Royal Road to Learning

ペーパーバックやオーディオブックのレビューを中心とした英語学習の日々をポチポチ綴っていきます。

メルバ・パティロ・ビールズ ウォーリアーズ・ドント・クライ

新しいブログに引っ越しして、事実上初の記事になります。初回の今日は、公民権運動により黒人(正確には有色人種全部)を差別する法律が撤廃されていった1950年代のアメリカで、最も差別が激しかった南部・アーカンソー州の人種統合されたばかりの白人用高校に初めての黒人生徒として通った生徒の一人、メルバ・パティロ・ビールズが自身の体験談を綴った回想録『Warriors Don't Cry』を取り上げます。

Warriors Don't Cry: Searing Memoir of Battle to Integrate Little Rock

Warriors Don't Cry: A Searing Memoir of the Battle to Integrate Little Rock's Central High (オーディブック)

ストーリーは、50年代のアメリカ南部では、公民権運動の高まりによって徐々に白人と有色人種とを分ける法律が疑問視され、撤廃されつつありました。それまで白人用った学校にも、黒人をはじめとした有色人種の通学も認められる様になります。そんな中、57年にアーカンソー州リトル・ロックに住むメルバと16人が元白人用高校に初の黒人生徒として通い始めますが、人種隔離政策に反対する白人生徒達の間にものすごい反発が起こり、メルバら黒人の通学を阻止しようとするデモや、執拗な嫌がらせが待ち受けていて・・・。

というものです。法的には人種隔離政策が緩和されてもすぐには無くならない人々の偏見と闘いながら、それでも自分の生まれや育ちに誇りを持ち、堂々と元白人用学校に登校するメルバ達17人のウォーリアーズが印象的です。白人生徒達の激しい差別に時には落ち込むメルバを叱咤激励し、最後まで堂々とする事を教えた彼女の祖母・インディアおばあちゃんの存在が光っていますね。落ち込んだときに読むと勇気を貰えます。

英語の難易度ですが、回想録という事もあり、一般のペーパーバックと比べても読み易い部類に入ると思います。ペーパーバックを読んでみたい!という方に特にお薦めです。

 残念な事に、この話から60年以上が経つ今でも人種差別は完全には解消されておらず、アメリカではよく人種差別に反対する抗議のデモが起こります。今では想像もつかない程の差別と偏見のあった時代に、良い方向に変わって行く希望を持ちながら行動していった心揺さぶられる話ですし、当時のアメリカの状況を知る貴重な歴史的資料でもありますので、是非多くの方に読んで頂きたい一冊です。